1年に1回しかない吹奏楽コンクール

県大会で落ちたら、もうそれで私達の夏は終わる。



そんなの、わかってる。

知ってるよ

でも、自信と言われたら

そんなの無いもん。




プレッシャーとか、人間関係とか、いろんなものが混じって、今の私には耐えきれなかった。

とりあえず、あんに言おう。

起こったことを説明するべく、私はまたスマホを立ち上げた。

八木 杏子は冷静だった。

(それで、麻里はどうしたいの)

そんなの、決まってる。

(ピッコロ、したい)

頭では分かりきってるのに、口には出しにくかった。

だって先輩には自信ないなんて戯けたこと言ったんだもの。

(ほら、全然自信なくなんてないじゃん。)

私は耳を疑った。

いやこの場合、目を疑ったんだけど。

(え、ないよ?)

(あるでしょ、やれるって思ってるんだから、それなりにあるんじゃないの)

衝撃だ

あんは時々私にスタンガンを当てる

(そっか、確かに)

その後もいろんな愚痴聞いてくれるあんに感謝しながら、私は深呼吸をした。

大丈夫じゃん

そうだ。

ずっと泣いてうじうじするなんて、私らしくないな

明日から、また頑張らないと

私の相棒のピッコロちゃんは渡さないんだから

まだ、辛いけど

泣いてても何も出来ないしね

ブルルとスマホが振動する。

見ると、泉 蒼の電話番号だった。

「もしもし、蒼?」

『もしもーし、そーだよ。麻里、ちょっと聞きたいんだけど』

「なにー?」

『バックのなかに俺の眼鏡入ってね?』

「へ、あ!ごめん!帰りにふざけて取ったまんまだった!」

『、、、そんなことだろーと思ったよ』

「えへへー。明日渡すね」

『おう、頼むわ』

蒼は、少し目が悪いから、普段は眼鏡付けてないけど合奏とか授業のときは眼鏡を付けているのです

『なーなー、なんで鼻声なわけ?』

「なっ!なんで」

『こっちが聞いてる』

あははと軽く笑って真面目なトーンで聞いてきた

『何かあったの?』

「ゔ。」

優しげな蒼の声に、また涙が出そうになって、必死に堪える

「私が、悪いの。ちゃんと覚悟してないから」

『聞くよ』

「長くなるけど?」

『いい。』

優しさに、堪えてた涙が溢れた

それと共に、なんだか話していると、心臓がドクドクと早くなっている気がした