室長が戻ってくると
しばらくして康太が室長の前に立つ

まさか?


「なんか言うことあんだろ?」

「鈴木課長!辞めて下さい!」

止めに入るけど、こんな口調の康太は私の手に負えない

「理由は、なんであれ
部下の前で課長にあんなことすんな!
課長は課長でも、こいつ女なんだぞ!
威圧しておさえつけんのが上司かよ?」

「康太!!いいの!!いいから!!」

「いや、鈴木の言う通りだ
すまなかった」


こういうところを好きだと思う


「ちゃんと話を最後まで聞くべきだった
今から聞こう」


立ち上がる真生さんに

私は、首を横に振った


「いえ 忘れて下さい」



デスクに戻り、書類を広げた

間に挟んであった封を閉じた診断書を開く


〝卵巣癌〟


その3文字をしばらく見つめた


再び封筒に戻し、シュレッダーにかけた


言えない


怖くて言えない




康太の言うように

私は、威圧された


本当に怖かった


手術しなければ、死ぬということより


真生さんに嫌われることが怖いと思った



恋ってなんですか?


こんなに私の心を乱すものなの?