「まぁ、書道もおやりに?さすが美桜様ね、きっと素敵な字をお書きになるのでしょうね」





「まだ始めたばかりなのでそんな大した文字なんて書けませんよ。それよりも大志様、先の武道大会でほとんどの部門で白星をお上げになったとか。うらやましいわ、うちの貧弱な息子たちに大志様の爪の垢を煎じて飲ませたいぐらい」





「そんな!ただやんちゃなだけですわ。流水のご子息様たちのほうがずーっと素敵ですわ」





「ふふ、あの唄と絵にしか興味のない息子たちが大志様のようなご子息と比べ物になるわけないじゃないですか」





「まぁ、本当に悦子様ったらお上手ね」





「聖様こそ」






うふふふと西城と流水、二人の奥方の会話をBGMにして、食事会はゆっくりと進められていた





あの後、今にも息子の胸倉を掴み、一本背負いで投げてやりたいほど怒り立っていた夫と今にも弟を殴り殺そうかという勢いの満を何とか宥めた苦労人の聖は、何事もなかったかのように流水家御一行を屋敷の中へと招いた





父と姉の視線にいたたまれなくなった大志は昔から二人に怒られると必ず味方になってくれる母の姿に隠れたが、この巨体じゃ全て隠し切れず、結局針の筵のような思いになりながら食事会の会場まで向かった





途中でふらついた体を父親に支えられながら歩くかのご令嬢と何度か視線があったが、その度に顔を真っ赤にさせ、顔をそらされた





まぁ、当然のことか





過去に何度も同じような経験をしたことがあったため、特に気にも止めることなく、大志の頭の中は既に食事会の御品書きのことで埋め尽くされていた