「なんだお前、助けてやったのにそれはないだろう。…まぁ、猫に感謝を求めるってのも変な話だな…いって!!」
自分の言葉が妙におかしく、つい笑ってしまった隙に子猫は大志の手を引っ掻き、逃げ去ってしまった
引っ掻けられた手を擦ってみたが、大して深くはなく所詮は子猫かと一瞥していると、目の前の何かがよろっと動いた
そちらに視線を向けると、見たこともない美少女が顔を真っ赤にさせて体をふらつかせている
どこかで見たことがあるなぁとその顔を凝視すると、真っ赤だった顔がますます赤くなった
熱でもあるのかと一歩踏み出すと、少女はきゃっと小さく悲鳴を上げ後ろによろけるとその小さな体が誰かの手によって支えられた
「気をつけなさい、美桜。それと、初めまして。君が大志くんかな?」
自分の名前を呼ばれハッと我に返り顔を上げると、穏やかな表情を浮かべている紳士の後ろで顔を真っ赤にさせ地団駄を踏みながらいきり立っている父親の姿を確認して、初めて自分のやらかしたことを認識した

