「おいでー、子猫ちゃん。大丈夫よ、わたしが受け止めてあげるから安心して飛び込んでいらっしゃいな」
着物の袖から真っ白く細い腕が露になることも厭わず、少女は両手を大きく上へと、子猫に向かって揚げた
しかし人間の言葉がわかるはずもない子猫は、突然現れた人間たちに怯え、小さな肢体がますます震え上がった
突然、麗しの少女が自分の隣で両腕を揚げはじめたことに驚いたが、それどころではなかった満は今もなお木を登り続ける大志をどのようにして引きずりおろすかと奥歯を強く嚙み締めた
「どうしたの?怖いの?大丈夫よ、絶対にあなたを落としたりなんかしないわ」
なかなか自分の胸に降りてこない子猫に痺れをきかせ、少女が更に腕を上へと揚げた瞬間、今日一番の春風が吹いた
風と舞う花びらが一瞬にして視界を奪い、怯んで腕を引いたその時
「みにゃぁっ」
突然の突風に足元を掬われた子猫が自身を支えていた枝から足を滑らせてしまっていたのだ
「子猫ちゃん!!」
急いで腕を揚げ、子猫が落ちてくるであろう場所まで駆け寄った少女だったが、その胸に子猫は落ちてこなかった
そしてそれとは別の大きな体が彼女の目の前に降り立った
「…はぁ、とりあえず地面に直撃だけは免れたようだな」
ホッとしたように安堵した大志は胸に抱えていた子猫をひょいっと片手で掴み上げた
突然のことで何が何だかわからない子猫はとりあえず自身の首根っこを掴む男にふしゃーーっと威嚇して見せた

