「もうええんとちゃうか?前向いて歩いても。章大のこと忘れんでもええねん。好きでええと思う。せやけど章大はもうおらんねん。おらへんねん。それにな。章大は怒らへんよ。雛乃に幸せになってもらいたいと思ってんちゃうかな?お前に幸せになってもらいたいって。」

亮の顔を見つめる雛乃。
   

「ええのかな?博貴を好きになってもええのかな?章大を裏切ってしまっとるみたいで後ろめたくなるねん。章大以外の人を好きになるんが怖いねん。怖いんや…。」


雛乃の目から溢れ出す涙。
   


「…もう二度と好きな人を失いとうないねん。…もう二度と同じ思いはしとうないんや…。」



頬をつたい零れ落ちていく。
グショグショに濡れた顔。
   
「もうええやろ。いつまでも同じ場所にはおられへんねん。章大には章大の。俺等には俺等の生きる場所があるんや。章大の分までお前には生きる権利がある。それにな。雛乃の幸せを誰よりも願っとるんは章大やろ?」

雛乃の頭を優しくなでる亮。
   
「泣くなや。もう泣くな。章大はお前の」
   
「笑ってるうちが好きなんやろ?」

顔をあげ口角をあげる。
   
「そうや。」

泣き笑いの雛乃。
優しい笑みをこぼす亮。