月の光。
人通りの少なくなった道。
亮と肩を並べ歩く雛乃。
   
「亮。」

急に足を止める雛乃。
   

「うち。博貴に告られてしもうた。」
   
「で?」


人事のように返事をする亮。
   


「どうしたらええと思う?」



困り果てた顔の雛乃。
   


「それはお前が決めることやろ?」



突き放すように言葉を返す亮。  

「そうやけど。うち。章大のことが好きやねん。忘れられへん。」

切なそうに亮を見る。
   
「そう言えばええやろ?」
   
「それでもかまへんって。章大の代わりでもかまへんって。」

俯く雛乃。
   
「博貴らしいいな。せやけどな。これだけは言うとくわ。その気が無いなら博貴とつき合うな。博貴を利用するのだけはやめてくれ。」
   
「わかっとる。せやから相談してるねん…正直、言うと博貴に惹かれてるうちがおる…博貴とおるとな。章大を思い出すねん。忘れたいわけやない。今でも章大のこと好きやから。」

か細い声。
一瞬、顔をあげたかと思うと再び顔を下げる雛乃。