誰かが呼ぶ声。
白くぼやけた部屋。
殺風景で人の気配もない。
ただ冷たい空気が亮を包む。
「亮ちゃん。亮ちゃん。」
白い闇の中浮かび上がる章大の姿。
「何でや?」
驚きを隠せない亮。
「亮ちゃん。ごめんな。ほんまにごめん。」
両手を合わせ亮に頭を下げる章大。
「ごめんやないで。」
亮の目から涙が溢れ出す。
「泣かんといてや。こんな俺のために。」
「泣いてへんわ。」
「もう一度会って謝りたかってん。亮ちゃんをこんなにボロボロしてしもうて。ほんまにすいませんでした。」
「アホ。謝るな。あの時お前に運転させた俺も悪いねん。せやから謝らんといてくれ。」
目を伏せる亮。
「亮ちゃん…。そうやな亮が運転させへんかったら俺も死なずにすんだんや。」
悪戯に笑う章大。
「章大くん。どの口がそんなこと言うてるんかな?」
拳をならす亮。
「冗談やって。後な。亮ちゃんにお願いがあるねん。」
真剣な表情の章大。
「何やねん。」
「雛乃のことや。亮ちゃんに頼みたいねん。亮やったら安心して任すことが出来るんや。」
「断る。」
即答する亮。
「何でやねん。ちょっとは考えろや。」
「考えなくても俺なんかよりもっとええやつがおるやろ?せやから安心しろや。」
「ほんまやな?」
亮を見る章大。
「ほんまや。」
章大を見る亮。
「これでここ残りなくなったわ。亮ちゃんさよならや。」
亮へ手を差し出す章大。
「しばしの別れやな。」
その手を握る亮。