消毒の匂いに包まれた病室。
窓から差し込む夕日。
点滴につながれ眠る雛乃の手を握る博貴。
コンコン
ドアをたたく音。
「入るで。」
ドアを開け果物の入った袋を博貴へ渡す信五。
「雛乃は?」
「今、眠ってる。」
「そうか。」
切なそうに雛乃を見つめると
廊下へと目視線をかえる信五。
「いつまでそこにいるつもりや。お前も入れや。」
俯いたまま病室に入る亮。
頭や左手に巻かれた包帯が痛々しくみえる。
「亮…。出てけや。雛乃の気持ち考えろや。」
亮だとわかると顔色が変わる博貴。
「俺は…ただ…。」
震えた瞳。
俯いたまま声を絞り出す。
「ただ何ねん。自分のエゴでここに来んなや。お前が。お前が雛乃から章大を奪ったんや。」
亮の胸倉をつかみ怒鳴り散らす博貴。
それでも博貴の手を振りほどくこともしず抵抗さえしない。
「ちゃう。あれは事故や。誰のせいでもあらへん。」
二人の間を割って入る信五。
博貴の手を振りほどくと二人を離す
「そうかもしれへん。せやけど雛乃はそうは思ってへん。」
雛乃に目をむける博貴。
「雛乃は亮が殺したと思っとる。ちゃうか?今もあいつは章大を失った悲しみや苦しみを憎しみとして亮にぶつけることしか出来ひんねん。」
身体を震わし声を殺す亮。
必死に涙を堪える。
「せやから…せやから何ねん。それは亮と雛乃がこれから乗り越えなあかん問題や。今、亮と雛乃を会わせな何も解決なんかしいひんねん。」
冷静な口調で博貴を諭す。
「見たないねん。亮に憎しみをぶつける雛乃の姿 見たないねん。」
さっきまでとは違い冷静な口調。
瞳に映るのは今にでも壊れそうな雛乃の姿


