ベッドで寝息をたてる雛乃の横で
窓の外を見つめる亮。
薄暗く染まっていく空。
生暖かい風が病室のカーテンを揺らす。

「…章大…?」

微かな声に振り向く亮。

「章大?何してん?座らへんの?」

亮に章大を重ねる雛乃。
  
「…。」

困惑した表情で雛乃を見つめる亮。
   

「雛乃。…俺は章大やない…。」 


一瞬、表情がくもると章大の姿が亮へと代わる。
俯き涙が溢れ出す。
   
「…帰って…帰ってや。」

声にならない声。
   

「亮の顔なんて見たないねん。帰って。」


近くにあった物を亮にむかって投げつける。
   
「帰ってや。」   

その場に固まったまま動けない亮。
ただ黙って投げつけられる物越しに雛乃を見つめる。
   
「何で…何で章大が死ななあかんの?約束したんよ。花火見ようって…一緒に花火
見ようって。せやのに何で。何でなん…。」

泣きじゃくる雛乃。
ベッドから起き上がり亮へとつめよる。
   

「亮が…亮がおらへんかったら章大は死なずにすんだんや。亮が殺してん。亮が私
から章大を奪ったんや。」


憎しみのこもった冷たい目。
   

「章大を…章大をかえしてや。章大をかえしてや。」


俯いたまま動かない亮の服を掴み揺する。
   
「…ごめん…。俺どうしたらええ?どうしたらええんや…。」

顔を上げる亮。
涙が床に落ちる。
   

「帰って…はよう出てってや。」


亮を病室から強引に押し出す雛乃。
乱暴にドアを閉める。
その場に倒れるように座り込む亮。
   

「ぁぁぁあああああああ。」


声をあげて泣く亮。