ムラオキテ

「はぁ!?馬鹿!芽衣を見捨てるわけないじゃん!」


萌莉はそう怒鳴って、芽衣に手を伸ばした。


「早く行くよ!風強くなってきているし...雨もほら!

...結構すごい雨だわ...、近くの男神川が氾濫するかもしれない。はやく帰ろう」


萌莉にしては、的確な判断だ。


芽衣は久しぶりに、豪華客船のような萌莉の家に行けること、そして萌莉が見捨てずにいてくれたことを、嬉しく思った。


芽衣は無言で萌莉の冷えた手を掴み、起き上がる。


萌莉はそれを見て、にっこりと笑った。


「今日はパパに、暖炉つけるよう頼んでおくよ。」


「ありがとうっ...!」


ぬかるみから足を這い出し、一気にスピードをつける。


逆に萌莉を引っ張るようなカタチで、芽衣は走り出した。


しばらくすると、霧に埋もれた大きな洋館が見えてきた。


霧を晴らすように手で宙を仰ぐふたり。


ここが、萌莉の家。


約300坪の敷地に、広大な箱庭と、大きな館。


隣には俗に言うワインセラーと、10000冊以上の蔵書を備えた図書館がある。


百葉箱では常に気温、湿度の観測が行われている。