ムラオキテ

(あたしは、どしゃ降りを避けるために萌莉の家に行ったんだ。


それで山門にLINEして、それで...)


そこからの記憶が、まるで削ぎ落とされたように消えている。


そのとき、タブレットがヴヴ、と音を立てた。


《早く、パートナーにしたい人を選択してね》


画面には、芽衣が今まで関わった人達の名前が、すべて書かれていた。


小学校の担任、近所のおばさん、お母さんのお友達に、告白した男子...。


きっとこのデータの中から、ひとり、パートナーをえらべ、ということなのだろう。


もうパートナーでもなんでもいい。


とにかくこの、一人ぼっちで寂しい状況を打破したい。


(あたしのパートナーといえばやっぱり、萌莉でしょ)


芽衣はデータから萌莉を選んで決定ボタンを押したのだった。


暫くすると、目の前に萌莉の残像が現れ始め、やがてきちんとした形となって出現した。


萌莉は芽衣を見ると、目を大きくさせた。


「あれ、芽衣!?...てかここ、どこだよぉ」


その、いつもと変わらぬ様子に思わずクスリとしてしまう。


やっぱ萌莉といると、落ち着くなぁ...。