どんな言い訳も通用しない。
例え、自分の身が危険に晒されていたとしても、民は世子の身を守る事に誇りを持っている。
時間は巻き戻すことが出来ない。
何故、別の方法が思いつかなかったのか、ソウォンは後悔の念に駆られていた。
きつく瞼を閉じ、手討ちになる覚悟をしていると。
ふわっと肩に何かが掛けられた。
「すまぬ、そなたにこのような事までさせて……。お陰で難を逃れる事が出来た。礼を言う」
怒気を含んだ声音ではなく、心から安堵した優しいものだった。
ヘスに肩を支えられ、上体が起こされる。
ソウォンに掛けられたのは、脱ぎ捨てたチョゴリ。
肌を露わにせぬ為、ヘスは包み込むようにそっと抱きしめた。
チョゴリの布地越しに伝わる体温。
どちらともなく早鐘を打つ心の臓。
屋外は騒然としているというのに、二人の周りだけは時間が止まっているかのようで。
ソウォンは息をする事さえ出来ず、硬直していた。
すると、ソウォンの体を布団の上にゆっくりと横たわらせた。
自然と絡み合う視線。
艶気を帯びたヘスの視線に、一瞬で全身が上気する。
額から目元、目元から頬へと、そっと触れる指先。
触れられたそこは、火が灯ったかのように熱を帯びる。
少しひんやりとしたヘスの指先は、ソウォンのぷっくりと膨れた小さな唇へと到達した。
白檀の香りを纏う肌。
ほど良く筋肉が付いていて、日々鍛錬していることが容易に伺える。
初めて知る男性の素肌に、ソウォンの瞳は完全に捕らわれていた。
「清純そうに見えて、そなたは意外と大胆なんだな」
「っ……」
「もしや、夫のある身か?」
「ッ?!…………ままままっ、まさか」
「だが、知っているのだろ?」
「な、何を……ですか?」



