ソウォンは、なりふり構わずヘスの上衣を無理やり脱がし、世子の体を布団の上に押し倒した。
「私が合図するまで目をお閉じ下さいませっ」
「何?」
「時間がございませんっ、お早くっ!」
「っ……、分かった」
切羽詰まった状況だという事は世子も承知。
何が何だか分からぬまま、世子は言われるままに瞼を閉じた。
部屋の外では血眼になってソウォンとヘスの行方を捜している行首たち。
男どもの怒声と共に次から次へと客間の戸が開く音が響いてくる。
深夜という事もあり、既に寝入っている者もいるというのにそんな事も考えず、行首たちは我を忘れて横暴な振る舞いを……。
ソウォンは急いでチョゴリとパジを脱ぎ捨て、下に着ているソッチマ姿になった。
そして、髷を結いている革紐を解き、艶やかな長い髪を下ろし、ヘスの体に飛び乗った、次の瞬間。
二人がいる部屋の戸が勢いよく開いた。
「キャアァーッ!!」
ソウォンは行首たちの顔を確認すると、生まれてこのかた出した事のないような悲鳴を上げ、自分の胸元を隠すように手で覆い、ヘスの上半身に身を伏せた。
そんなソウォンの悲鳴を耳にしたヘスは無意識に目を開ける。
「もっ、申し訳ありませんっ、行首様!!」
水蛇商団の行首はソウォンを見て、この部屋が月花商団の行首の部屋だという事を知り、慌てて戸を閉めた。
並みの行商人なら言い訳も利く。
だが、月花商団と言えば、商いをしている者で名の知らぬ者はいないほど大きな商団である。
しかも、その行首だという事は取引の際に確認済みなのだから、手の打ちようがない。



