「これは、清国から持ち込まれた物ではありません」
「何?」
「清国の物はもっと粒が細かく滑らかで、何より乾燥しています」
「どういう事だ?」
「回青は鉱石を砕き製粉しますが、清国から持ち込まれた物となると輸送に何日も要するので、幾ら甕に入れたとしても、こんなにも湿気を含んだりしていません。これは明らかに粉砕してから五日、………いえ、三日と経っていない物と思われます」
思いもしなかったソウォンの言葉に唖然とするヘス。
ソウォンは胸元から布地を取り出し、一握りの回青を包んだ。
「世子様」
ソウォンが外に出るように目配せする。
二人は外へ出て、錠前に鍵をかけていると。
「何者だっ!!」
灯りを手にした男が数人現れ、見つかってしまった。
「ッ?!逃げるぞっ」
ヘスはソウォンの手をぎゅっと掴み、駆け出した。
「向こうに逃げたぞっ、追え!逃がすでない、捕まえろ!!」
番頭の男が声を張り上げ、笛の音が響き渡る。
二人は雑木林を駆け抜け、客間がある棟へと辿り着いた。
「こっちですっ」
ソウォンはヘスの手を握り返し、ユルの部屋へと駆け込んだ。
生憎、ユルはまだ戻っていないようで、灯りだけがともっている。
「客間に逃げたぞっ!男二人組だ、何としても捜し出せっ!」
「はい、行首様っ」
静まり返る夜更けに突如男の声が響き渡る。
「世子様っ、後でどんな罰でもお受け致しますので、どうかお許し下さいっ!」
ソウォンは頭を下げ、息を乱しながら躊躇いも無く、ヘスの服に手を掛けた。
「なっ、何をするのだっ?!」
「しっ!静かに……じっとしてて下さいませ」
ヘスはソウォンの手を振り払おうとしたが、予想もしない展開に思わず笑みが零れ、身を任せる事にした。



