月明かりを頼りにソウォンとヘスは気配を消して、母屋の裏へと向かった。
「そなたは何処を調べようとしていたのだ?」
庭先の大きな木の陰に身を潜め、人気が無いことを確認しながら呟いた。
「うちの商団の者が、行首所有の蔵を調べると申しておりましたので、私は居住区を……。世子様は、あるとするならば、この敷地内の何処にあるとお考えで?」
「そうだな……、あれほどの大きな甕が幾つも置けるとなると、床も頑丈でなければならないな」
「はい、私もそう思います」
「だとすると、………祠堂(サダン:一番奥の起伏が高い場所に先祖を祀る堂)か」
「…………恐らく」
二人は顔を見合わせ、小さく頷いた。
「暗いから足下に気を付けよ」
「はい、世子様」
静寂に包まれる夜更け。
時折、梟の囀りが疳高く響く中、最奥の祠堂へと辿り着いたソウォンとヘス。
山間にある事もあり、敷地内を一望できるほど小高い場所に祠堂がある。
「世子様」
「どうした」
「おかしいです」
「何がだ?」
ソウォンは眉根を寄せ、祠堂から表門へと視線を向け、小首を傾げた。
「あれほどの甕をこのような場所に運ぶでしょうか?」
「………そうだな」
ここは漢陽の街中とは違う。
敷地内にも至る所に岩があり、荷車が行き来するには難しい。
しかも、表門から祠堂まで荷車を引いたとしても、大きな甕を載せたまま坂を上るのは至難の業だ。
「それに、荷車の車輪の跡もありません」
「車輪の跡?」
「はい、それもよくあるような一重の車輪ではなく、二重になっている車輪の跡です」



