丑時(チュクシ:午前一時から午前三時)の刻、チョンアはソウォンが寝ているのを確認した後、静かに部屋を出た。
部屋の外には既にユルが待機していて、二人は目を見合わせ、静寂な夜へと姿を消した。
すると、ソウォンは素早く起き上がり、何やらごそごそと着替えを始めた。
夜着用のチョゴリを素早く脱ぎ捨て、ソッチマをたくし上げ、男性用のパジ(下衣)を穿く。
そして、チョゴリも男性用のものを羽織り、急いで長い髪を髷にした。
「よし、これでいいわ」
手鏡で確認したソウォンは、こっそりと部屋を後にした。
商団の仕入れの為に男性用の服を常時持ち歩いているソウォン。
こんな時にも役立つ事がある。
すっかり男装する事もお手の物になったソウォンは、軽やかな足取りで行首の自宅がある方へと向かおうとした、その時。
「っ?!」
ソウォンは何かにぶつかった。
月明かりしかない薄暗い庭先で息を呑むと、嗅いだことのある香りが鼻腔を掠めた、次の瞬間。
スッと胸元に何かが近づいた。
「そんな格好をしているから、見間違えるところだった。………ソウォン」
「ッ?!」
胸元に潜めてあるはずのトルパンジが、ぶつかった拍子に飛び出したようで。
それを手にした人物が……。
「………世子様?」
「フッ」
こんな夜更けにいるだなんて、思いもしなかった。
「こんな時間に………どうして……」
「そういうそなたも、何故こんな時間にそのような格好を……?」
「………」
「………」
二人は顔を見合わせ、思わず吹き笑いをした。
「目的は同じだ」
「………そのようですね」



