部屋へ戻ったソウォンとユルは、チョンアに甕が無かったと報告した。
「では、どこにあるのでしょう?もしや、この敷地内に無いのでは……?」
「いいえ、確かにこの敷地内にあるわ」
「どうしてお分かりに……?」
別の屋敷に届けられたかもしれないというのに、ソウォンは確信していた。
「荷車の車輪の跡がここの門前にあったの」
「ですが、車輪の跡など何処にでもありますよ?」
「そうね。車輪の跡は街中至る所にあるけれど、甕を運んでいた荷車の車輪は特殊な車輪をしていたの」
「特殊とは……?」
「重い甕を幾つも運ばなければならないから、荷車自体が頑丈に出来ているってわけ。車輪は二重になっているものだったから、鮮明に記憶に残ってるわ。あの車輪にチマの裾が絡みそうになって、慌てて避けたんですもの」
「何とっ!お嬢様にそんな事が……。私がお傍にいなかったばかりに……危うく大怪我をする所だったのですね?」
チョンアはソウォンの怪我が大したことなかった為、それほど深く考えていなかった。
けれど、ソウォンの話と世子の心配する様子から大きな事故に成り得るほどのものだったと初めて知ったのである。
「チョンア、私は大丈夫よ?いざとなれば、チマなんて破けば済む事ですもの」
「ですが、お嬢様……」
「分かってるわ、両班の娘なのだから………ね?」
「………はい」
慎ましくあるべき両班の娘が、チマの中を人目に触れさせるべきではない事くらいソウォンでも理解できる。
だが、命あってこそ……である。
「夜が深まったら、密かに調べないと……」
「では、私とユルが」
「私も調べるわ」
「いいえ!お嬢様はお怪我をなさってるのですから、今日はゆっくりと休んで下さいませっ!」
「………でも」
「いいですか?!私のいう事が聞けないのなら、明日にでも旦那様に文を書きますよ?!」
「っ?!……チョンア、それは……」
「良いですね?お嬢様はお部屋でじっとなさってて下さいませね?!」
「…………分かったわ」



