戌時(スルシ:午後七時~午後九時)の刻。
ソウォンはユルと共に、水蛇商団の倉庫にいる。
夕食の際に番頭に取引を持ち掛けたのである。
番頭の後を追い、倉庫に到着すると、水蛇商団の行首が出迎えた。
「これはこれは、かの有名な月花商団様。何もない田舎の商団ですが、お気に召す物がありますかどうか……」
商人の身分証には商団名が記載されている。
ソウォンはユルを仮の行首とし、自分が付き人として倉庫の中を確認する事にした。
万が一、何かあったとしても、ユルが一緒ならば心配ないと踏んだのだ。
ソウォンとユルは燭台を手にして、三つある倉庫を隅々まで確認した。
「……無いわ」
「大きな甕らしきものはありませんね」
「………ん」
行首と番頭に気付かれないように小声で話す。
隅々まで確認したが、それらしいものは見当たらなかった。
「行首様、如何ですか?」
「そうだな………」
番頭は作り笑いで手をすり合わせる。
ユルはソウォンに目配せすると、ソウォンは小さく頷き、薬草が並べられている棚の前に立った。
「この当帰(トウキ)と香附子(コウブシ)、それとこの黄芩(オウゴン)を十両分頂くわ」
「じゅっ、十両分もですか?!」
「清州と言えば、良質の薬草が採れることは有名ですからね。どれも申し分ない品です。ただ、今回はこれらが目的でこの地に来た訳ではないので、あまり荷を多くすることが出来ないもので……」
「いえいえ、十分です」
満面の笑みを浮かべる行首と番頭。
思いがけない取引が出来たとあって、興奮を隠せずにいた。



