商人だと知られてしまったが、大行首だと知られた訳ではない。
今は回青の事を気にしているから、ソウォンが何者なのか、気にならないようだ。
ソウォンは世子の出方を気にしながら、出来るだけ早くにお引き取りして貰えないかと気を揉んでいた。
……ソウォンの胃袋は限界をとうに越していて、今にも腹の虫が泣き喚こうとしていた。
「世子様、ここはお任せして、本来の任務を……」
「……分かっている」
ヒョクに促され、ヘスは渋々腰を上げた。
「明朝どうなったか確認しに来るゆえ……」
「承知致しました」
「くれぐれも気を付けるように」
「………はい」
ヘスとヒョクがその場を後にすると、チョンアは声が漏れるほど大きく息を吐いた。
「緊張しましたよ~、お嬢様」
「………ん」
「あのお方が、……世子様?」
「……ん」
ソウォンはヘスに会うのは今日で三度目。
だが、チョンアとユルは初対面なのだから、仕方がない。
会いたくても会えるような人ではないのだから、緊張するのも当然だ。
チョンアは緊張したせいか、喉が渇いたようで、お茶を一気に飲み干した。
ユルは何が何だか理解出来ないようで、首を傾げた。
そんな中、ソウォンは豪快にチマをつまみ上げ、
「チョンア、先に行くわね!」
「行くって、どこへですか?!」
「どこって、食堂に決まってるじゃないっ」
「えぇ~?!」
ソウォンはチョンアとユルの間を飛び越え、一目散に食堂へと向かった。



