世子様に見初められて~十年越しの恋慕



ヘスを上座に座らせ、ソウォンは丁寧にお茶を淹れる。
本来なら夕食の刻なのだが、さすがに“一緒に食べましょう”とは口が裂けても言えない。
お茶を淹れることさえ貴いというのに……。

お茶を一口口に含んだヘスは、ソウォンを真っすぐ見つめて口を開いた。

「さぁ、どういう事なのか、説明して貰おうか」

ヘスの真剣な表情にソウォンはごくりと生唾を飲み込んだ。

「さっきの回青は、そなたに怪我を負わせた者たちが運んでいた物なのか?」
「………はい」
「ならば、その者らを捕まえれば分かるという事か」
「………それは、どうでしょう?」
「どういう意味だ」
「私に怪我を負わせたのは、この商団の者です」

ソウォンは自分たちがいる部屋を示すように手をかざした。

「何?!では、すぐさま問い詰めねば」
「お待ち下さいっ!確かにこの商団の者だと思いますが、積み荷を“審薬様に届ける薬剤”だと言ってました」
「どういう事だ?」
「恐らく、運んでいた者らを問い詰めても、甕の中身が何なのか知らない者か、もしくは、知っていて知らぬふりをしている者でしょうから、問い詰めた所で素直に吐かぬと思います」
「では……」
「私共が今宵ここに泊まりますので、密かに調べてみます」
「どうやって?」
「私共には商人の身分証がございます。一先ず、私共の品と取引しないかと話を持ち掛け、倉庫の品を確認して参りますので……」
「………甕があるか、調べるという事か」
「はい」
「だが、そんな簡単に倉庫に入れるだろうか?」

世子が心配になるのも無理はない。
取引は信用が第一。
見知らぬ者と取引するとなると、それ相応の品が必要になる。

「その点においては、ご心配には及びません。何としてでも確認致しますので……」