世子様に見初められて~十年越しの恋慕



「お嬢様っ、どうなってるのです?あの者らは一体、何者なんです?」

ソウォン達の後ろを歩くヘス達を気遣い、チョンアは小声で尋ねた。

「チョンア、あのお方は………」
「…………あのお方?」

覗き込むように顔を近づけるチョンア。
そんなチョンアに胸元に隠してあるものをひっそりと見せた。

「この方よ」
「……………へっ?!で、ではっ………」
「ん、…………世子様」
「っ?!」

チョンアが驚くのも無理はない。
漢陽から遠く離れた山間の街で、偶然にもお会いする事など無いと思っていたのだから。

チョンアはソウォンの言葉を確かめる為、振り返ようと。

「駄目っ!失礼に値するわ」
「そ、そうでございますねっ」

王族を許可なく拝顔してはならない。
例え、許可が下りたとしても伏目がちに拝顔するのが当たり前だ。
それが、王族の中でも頂点に立つような立場の世子なのだから、会話する事さえ憚れる。

本人が身分を明かしてないゆえ、罪を問われることは今の所ないが……。
それでも、極力接点を避けたいのが本音だった。

時間を置き、冷静になって話し合う事が必要だと考えたソウォン。
歩きながらあらゆる事を想定して、どんな言葉が適切か、必死に考えていた。

「ユル、この街で蛇の紋様をした商団を探して」
「蛇ですね、承知しました」

市場内を歩きながら、蛇の紋様がある商団を探していると。

「あったっ!」
「えっ、どこですか?」
「ほら、あそこよ」

ソウォンの指さす先に、“水蛇商団”(スペムサンダン)と書かれた篇額(看板)が掲げられている。
その両脇にとぐろを巻いた蛇が描かれた提灯がかけられている。