「お嬢様っ、どうなってるのです?あの者らは一体、何者なんです?」
ソウォン達の後ろを歩くヘス達を気遣い、チョンアは小声で尋ねた。
「チョンア、あのお方は………」
「…………あのお方?」
覗き込むように顔を近づけるチョンア。
そんなチョンアに胸元に隠してあるものをひっそりと見せた。
「この方よ」
「……………へっ?!で、ではっ………」
「ん、…………世子様」
「っ?!」
チョンアが驚くのも無理はない。
漢陽から遠く離れた山間の街で、偶然にもお会いする事など無いと思っていたのだから。
チョンアはソウォンの言葉を確かめる為、振り返ようと。
「駄目っ!失礼に値するわ」
「そ、そうでございますねっ」
王族を許可なく拝顔してはならない。
例え、許可が下りたとしても伏目がちに拝顔するのが当たり前だ。
それが、王族の中でも頂点に立つような立場の世子なのだから、会話する事さえ憚れる。
本人が身分を明かしてないゆえ、罪を問われることは今の所ないが……。
それでも、極力接点を避けたいのが本音だった。
時間を置き、冷静になって話し合う事が必要だと考えたソウォン。
歩きながらあらゆる事を想定して、どんな言葉が適切か、必死に考えていた。
「ユル、この街で蛇の紋様をした商団を探して」
「蛇ですね、承知しました」
市場内を歩きながら、蛇の紋様がある商団を探していると。
「あったっ!」
「えっ、どこですか?」
「ほら、あそこよ」
ソウォンの指さす先に、“水蛇商団”(スペムサンダン)と書かれた篇額(看板)が掲げられている。
その両脇にとぐろを巻いた蛇が描かれた提灯がかけられている。



