「水害調査の帰路で、偶然にも清州のとある場所にて無許可の鉄鉱石採掘場を見つけました。更には採掘の際に採れる原料で回青というものがあるのですが、回青は青い顔料になる素で産出国が極端に少ない為、高値で取引されており、我が国では他国に頼っているのが現状。それが密かに闇取引され、それにより得た多額の資金で京畿道の郊外で私兵を育成している事実を突き止めました」

ヘスは鋭い目つきで領議政を射貫く。
長年に渡る王の憂いを晴らすべく、言い逃れができぬほどの所業を積み上げた。

「これらは明らかに謀反を企てた証拠です」
「何年も前から私兵の件は密告を受けている。それらに関わった者は?」

王はヘスに小さく頷く。

「領議政チョ・ミンジェ、左議政ト・サングク、左参賛ハン・インス、…ー…以上十七名が関わった重臣です。その他に関わった者はここに記してあります」

ヘスは書簡を尚膳へと手渡し、それを尚膳が王へと。

「王様」

沈黙を破るかのように静まり返る正殿内にチョ・ミンジェの声が響き渡った。
皆の視線がチョ・ミンジェに集まる。

「世子様が仰る通りです」
「認めるのだな」

領議政の言葉に王の眼が光る。

「罪は認めます。ですが、一言加えるとすると、得た資金はこの国の為にとしたまでで」
「何を戯けた事を」

ヘスが領議政の元へと歩を進める。

「災害続きで国庫が困窮している昨今。如何にして救済の手を差し伸べるかは多様ではありませぬか」
「フッ、そんな理屈が通るとでも?」

領議政だけでなく、関わった者全てを処罰するとなると、重臣の殆どが該当する。
けれど、だからこそ、腐った根を切り落とさねばならない。

「尚膳、例の者を連れて参れ」
「承知しました」

己の罪を逃れる為、重臣らは各々に再考を促すべく声をあげる中、一人の娘が姿を現した。