「この御簾、紅梅色よね?」
「言われてみれば、そうですね」
「下ろしてみましょう」

二人は寝床に施された御簾を下ろすと、縁取りに艶やかな刺繍が施され、房紐には白磁の玉が付いていた。
安堵のため息を漏らすソウォン。
少しずつだが、確実に進めていることに胸を撫で下ろす。

「『白磁を愛でる』と言っても、こんな小さな玉をどうやって愛でればいいのかしら?」

親指の頭ほどの小さな玉。
青海波の模様があるだけ。

「この青海波の模様が何かを意味してるみたいね」

指先でなぞりながら、何かに変換出来ないかと思考を巡らす。

「青い海?……波?………川?それとも水?」

思い当たるものを次々に紙に書き出していると、

「白磁は白、青海波は水。これを繋げると『泉』です!」
「あ〜なるほど!」
「ここ景福宮で該当するのは、慶会楼と香遠亭の二ヶ所です」

納得したソウォンは訳した紙を手に取り、次の暗号を読む。

「次は『蜂の巣を探索』だわ」
「蜂の巣ならば、香遠亭でしょうか?東屋が六角形です」
「それだわ!!」

少し前まで行き詰まっていたのに、洞窟の出口が見えたかのように、ソウォンは手応えを感じていた。

「今日はもう遅い時間なので、夜が明けたらお連れします」

流石に暗い中、深夜に後苑を歩き回るのは怪しまれる。
嬪宮が寝付けなくて散歩するとしても、深夜にこそこそしていたら人目についてしまう。
それならば、日中に散歩してる風を装って、人払いした方が良さそうだ。

「では、ゆっくりお休み下さいませ」

深々と一礼したダヨンは、足音も立てずにその場を後にした。

「明日は湯浴み出来るかしら?」

夜着に着替え髪を下ろしながら、ぶつぶつと独り言を呟く。

「こんなにも世子様の近くにいるのに…」