ソウォンは今一度室内を見回す。
すると、ジルが人差し指で天井を指した。

「縦横九つに……」
「なるほど」

二人で見合わせ、手元の紙に視線が移る。

「次は『紅梅に天の川』」
「紅梅はあれですね」
「えぇ」

天井に施された模様の中に紅梅が沢山記されている。

「天の川は……七夕?」
「七夕であれば、乞巧奠(きっこうでん)でしょうか?」
「乞巧奠なら、裁縫や刺繍が上手になるよう願う日よね」
「紅梅が施された刺繍の物でしょうか?」
「恐らく…。この部屋には見当たらないから探してみましょう」

ソウォンとジルは他の部屋を探してみるが、紅梅の刺繍が施された物は見つからない。

「無いわね。何かを見落としてるのかしら?」

ソウォンは暗号を訳した紙に視線を落とし、考え直す。
けれど、それらしい答えは見つからず。

「次が『白磁を愛でる』だから、白磁を探してみるのはどうかしら?」
「白磁ですか?見てみます」

ジルは部屋に戻り、白磁を探し始めた。
ソウォンもまた、ジルと反対方向の部屋から開始して、隈なく白磁を探し始める。

公主が亡くなり、殆どの調度品は片付けられている。
花器や香炉といった白磁があるはずもなく。
全ての部屋と廊下に至るまで隈なく探したが見つからなかった。


あと三日しかない。
何としても解明しないと……。

子の刻を過ぎた頃、ダヨンがやって来た。
ジルから状況を聞いているのか、来て早々に暗号を訳した紙を確認している。

「寝れそうにないから、少し付き合って貰えるかしら?」
「はい、勿論です」

ダヨンは温かいお茶を淹れ、いつでも休めるようにと寝床の準備を施し、ソウォンの為に墨をすっていると。

「あっ!」

突然、ソウォンが固まった。

「もしかして、これかもしれないわ」

ソウォンは勢いよく立ち上がり、こくこくと頷く。