「それを外すでないぞ?」
「ッ?!」
人差し指で示した先は、黄金に輝くトルパンジ。
不敵に微笑んだヘスは、ユルの肩に手を乗せ耳打ちする。
すると、ユルは地面に額を打ち付ける勢いで深々と頭を下げた。
それを見たヘスは満足そうな笑みを浮かべながら、イノと共に裏門へとその場を後にした。
「お嬢様」
「ユルは、………呼ばれて来たの?」
「はい。あのイノという男に呼ばれて、ここへ」
「他に何か言ってた?」
「そうですね、………お嬢様達が倉庫から出て来られるまでの間に、大体の話は聞きました」
「………そう」
ソウォンは大きく深呼吸し、気持ちの整理を図る。
短時間に色んな事があり過ぎて、脳内が混乱していた。
「倉庫の中はどうだったのですか?」
「あっ、それは……。倉庫の中に地下通路が隠されてて、その地下通路を下りた先に密輸で手に入れたと思われる銀隗の山があったわ」
「銀隗ですか……」
「結構な量だったから、かなり前から行われてたと思うわ」
「……そうですか」
ソウォンとユルは辺りを気にしながら小声で会話し、台所へと向かい始めた。
倉庫での経緯を話し終えると、ユルは目を丸くした。
「あのイノという者以外にも、密偵がいたのですか……」
全く気が付かなかったユルは、すっかり自信を無くしていた。
「自分はまだまだですね」
「仕方ないわよ。専門的な訓練を受けている者達でしょうから、ユルが気付けなかったのも無理は無いわ」
「ですが……」
「そんな事より、あの暗号………。どこかで見たことがあるような気がするのよね……」
「木札に書かれていたというやつですか?」
「えぇ。でも、いつどこで見たのか………」
ソウォンは小首を傾げながら、必死に記憶を辿っていた。
すると、ポラ達がいる台所に近づいたこともあり、ユルはソウォンの目の前に跪いた。
「お嬢様」
「っ………、何?急に……」
「申し訳ありません、………失礼します」



