世子様に見初められて~十年越しの恋慕



鍵を握りしめるソウォンはヘスの傍へと歩み寄ると、時同じにして、ヘスは小さな小箱を手にしていた。
銀隗がおさめられている中に一つだけ敷き詰め方がおかしなものがあったらしい。
その銀隗を退けてみると、下に小さな小箱が隠されていた。

「これで開くと思います」
「ッ?!どこで、それを……?」
「フフッ、それは秘密です」

少しばかり意地悪く微笑んだソウォンは、手にしてる鍵を差し出した。
ヘスは感服とばかりに溜息を吐き、ソウォンから受け取った鍵を小箱の錠前に挿した。
すると予想通り、ソウォンが見つけた鍵は、ヘスが見つけた小箱の物だった。
中には麻紐で括られた竹の書簡が入っており、そこには何やら暗号のようなものが記されている。

「何を意味しているか分かるか?」
「いえ……」

文字ではなく、何かを模した形でもない。
だが、鍵を掛けてまで厳重に保管しているところをみると、何らかの証拠に違いないと踏んだヘスは、木札を丸めて懐にしまった。

「そろそろ出るぞ」
「………はい」

二人は小箱や鍵を元あった場所に戻し、再び倉庫内へと。
入口の扉の前まで来たヘスは振り返り、手蝋でソウォンを照らす。

「ここを出たら、あの護衛の男と出来るだけ早くに出るのだぞ?……良いな?」
「……………はい」
「今後、このような真似は二度とするでないぞ?……良いな?」
「……………はい」

目を離したらすぐさま危険な目に遭いそうで、ヘスは心配で堪らなかった。
だが、そんな風に心配されているとは知らず、ソウォンは先ほどの木札の暗号が気になって仕方なかった。

倉庫の外に出ると、イノとユルがそこにいた。

「これを頼む」
「承知しました」
「それと、明朝一番に奴婢夫婦の身を司憲府(サホンブ:官吏の違法行為を監督するなどの政府官庁)に移す手配を頼む」
「はい、世子様」

ヘスはイノに鍵を手渡し、ソウォンに視線を向けた。