夢でしか、ないから。


とりあえず、カラオケの外に出て

待っていることにした。

少し風が吹いていて肌寒い。

今から星が来ると思うと少しにやけてしまう。

別に好きとかじゃないけど。

久しぶりに会うからかな。

突然後ろの方から自転車の

ブレーキ音が聞こえた。

振り返ると、星が自転車にまたがって

こっちを見てる。

急いで来たのかな。少し髪が乱れてる。

中学を卒業してまだそんなに経ってないのに

すごく懐かしい感じ。

「ごめんね。」

え?いきなり謝ってきたことに驚いて

口が開いたまま黙ってしまう。

「龍が勝手に遊ぶって決めたんでしょ。

だからごめん。」

龍はさっき電話をかけてきた人。

星と龍は中学からの親友みたいなものだった。

朝は毎日一緒に登校していた気がする。

「じゃあどうして迎えにきたの?」

勝手に決めたってわかってるなら、

普通迎えに来ないよね?

「久しぶりだったから。会うの」

目をこすりながら言う星が可愛く見えて

キュンとしてしまう。

きっとそういうつもりで言ったわけではないんだろうな。

「とりあえず、乗って?」

なにも言わないで

星の乗っている自転車の後ろに乗る。

重くないかな?!

さっきカラオケで

パスタとポテト食べちゃったし。

「・・・あのさ」

やっぱり重い?え、どうしよう。

「・・・手。」

手?私自分の手を見る。


「うふぁ!!ご、ごめんね!!」

気づかないうちに

星の腰の辺りのTシャツを握っていた。

「でもこうしないと後ろに乗れない・・・」

「そうなの?それじゃいーや」

ちょっと嫌がってる?

申し訳なくなって、離そうとした。

「うぉお!ぉお落ちる!!」

手を離した瞬間体のバランスが取れなくなって

足もブラブラと安定しない。

本当に落ちてしまうと思ったら

星が私の手を握ってきた。

「いーよ捕まってて」

そう言って星は私の手を自分の服に


握らせるよう腰に置いた。

素直に服にしがみつく。

「ごめんね・・・」


申し訳なく謝る。

「そのまま俺ん家行っても大丈夫?」

え?!2人っきり?!龍たちは?!

「俺ん家にみんないるから」


あぁ、そういうことね。

変なこと考えちゃった・・・。


「あ、うん大丈夫!」


なんか分かんないけど、ハラハラする。


星の家に着くまで、ずっと沈黙のまま

星は自転車を漕いでいた。