わし、川畑和美(かわはたなごみ)は九州の全日制の学校を辞め引っ越してきた。そして千葉県の定時制校やって来たのだ。

学校初日、わしは下を見ながら渡り廊下を歩いていたときだった。どんっと誰かにぶつかり貰ってきたばかりの真新しい教科書をぶちまけた。『あーやっちしまったやん』と心の中で思った。方言混じりの言葉遣いが特徴である。「すいません!」と教科書を拾いながら謝っていた時だったふと目があってしまった。少女マンガに出てくるような男の子で白い肌、二重に大きな瞳を持っていた…。「綺麗な顔ばしちょる…。」わしは口から漏れとったみたいで驚かれた。「なんて言った?」っと彼に聞き返され恥ずかしくなった。上手く喋ることが出来んで「大丈夫?」と聞かれた。わしは勢い余って「気にせんでわしは大丈夫やけん!」『また、人前でわしって言ってしまった…。』一人でしょげとったら目の前男の子に笑われてしまった。その子の笑顔はとても優しい顔をしていたことを忘れられなかった。編入してきて、数日後のことだった、学校の先生に「病院あるから遅刻するかも」と電話を入れた日のことだった。やっぱり遅刻した…。そのときの授業は体育でバスケをしていた。笑顔が優しい男の子とは別々のチームだった、その子のことを先生に聞いたら、『頭はいいし、スポーツは出来るし、先生たちからしたら、定時制にいるのが勿体ない存在』とか何とか言っていた。そんなことをブツブツ考えていたら、顔面でボールをキャッチしていた…。「どこ見て、投げとんの?わしはゴールじゃなかとぞ!」ボールが飛んできた方を見ると、優しい笑顔の男の子が両手を合わせて謝っていた。「痛かった?ごめん!」「わしの方こそいきなり叫んでごめん!大丈夫やけん。気にせんでいいけん。」

それが始まりだった。