ザー






降り止まない雨の中、



大きなあじさいの側で



二つの黒いレース状の傘が、空を向いていた






「愛、もう行こう。風邪、引いちゃうよ」



「うん」






しばらくすると二つの傘はゆっくり動き出して、




あじさいの側を離れていった。









六月の中旬、


大きなあじさいの花が



悲しみいっぱいに咲いた。














その悲しみと切なさとは、




少女を救った、ひとふさの


ほんのり赤い、あじさいの姿だった。















「ありがとう。あじさい」












あじさいに助けられた、



一人の少女のお話。























―あじさい少女―