「愛ちゃんは本当にいい子ねぇ」



「可愛いし、頭も良くて。お母さんも自慢の娘さんねぇ」





大企業の社長の娘、

『一ノ瀬 愛』は、なんでも完璧にやってきた。




勉強ならいつも百点の自信があったし、


スポーツはいつも"見本"として先生に選ばれ



綺麗な澄んだ瞳を持ち


ふっくらとした赤い形のいい唇



まるでお人形のように愛らしい顔だった。






「愛、早くしなさい。レッスンに遅れてしまうでしょう」



「はい、お母様」




いつも母親をお母様と呼び、毎日習い事に向かう日々。


もちろんそれ相当の、

近所ではとても有名な大きなお屋敷に住んでいた。







「今日はピアノ教室でよろしかったでしょうか?」



愛と母親が乗った、黒く大きな車の運転手が言った。




「ちょっとあなた!火曜日はバレエだと言っているでしょう!まったく、いい加減覚えてほしいわ」



「す、すみません…」




今日も運転手は、慌てて車を走らせた。





運転手が母親に怒られる姿を愛はボーッと見ながら


自分の爪を磨いている