―――――それから5年の月日が流れ、六月。
愛は、静かで大きな庭を
姉の維(ユイ)と散歩をしていた。
実姉の維とはすぐに気が合い、仲良く暮らしているのだった。
広い庭は、バラ、ボタン、カスミソウ、ポピー。
様々な花の苗が、まだ緑色で青々としている。
ガシャン!!
すると突然、家の中から何かが割れる聞こえてきた。
「塊(カイ)!!なんなのよこの点数は!!!」
それにこの叫び声。
それはまさしく、あの母親の声だった。
塊というのは、あの時お腹にいた子供。
男の子だった。
それを聞いた愛と維は、顔をしかめる。
「姉さん、あの人は一体いつ気付くのでしょう。完璧とはなんなのか、何が家族に必要なのか、ちっとも分かっていない」
「さぁ…。もしかしたら、あの人には一生理解できないのかもしれません。悲しいですね」
「えぇ…」
すると突然、雨がしとしと降ってきた。
愛と維は、黒いレース状の傘を空に向けて差す。


