「あなたは悪魔をどう思いますか?」
 私はこのケースだった。国によっては宗教は生活の、いや人生レベルでマジに付き合っていかなければならない重要なファクターであり最後の砦のようなものだ。
 しかし、日本にいる限りその重要性を感じることはそうそうない。せいぜい食卓のご飯と作り手にかけるぐらいなのである。
「えーと、悪いものを指すものじゃないかと思いますけど...」
 という捻りも何もあったもんじゃない解答しか返すことが出来なかった。その場はポストにチラシを置いていかれて終ったが、この時私の頭では嵐が発生していた。もっとこう、あっただろう!
 そして今回二度目のチャンス。同じ鉄は踏むまい、練りに練って温め続けた最高品質のパン...じゃなくてわたくしめの意見を述べさせて貰いましょう。
「貴方の指す悪魔というのは種族的な意味ですか?それとも比喩的な意味でしょうか?もし前者なら分かりません。会ったことがないんですから。強いていうなら翼があって飛べるし格好いいと思います。後者ならまあ大抵は悪いものとしてとるんじゃないでしょうか。けれど、人間自体凶悪的な行動をとっています。自意識がある時点で個があり矛盾は生じます。なら、人にせよ悪魔にせよはたまた天使にせよ良し悪しは千差万別だと思います」
 よし...言った...私は言った、頑張った!ガッツポーズ!
 アニメやドラマと違って己の意見はなかなか全てを言い切れない。なにせ環境が目まぐるしく動き回ってとてもじゃないが事前に原稿用紙に書き上げ付けては消しての作業を行わないと渾身のストレートは投げられない。
 きっと玄関先の奴のにこやかスマイルは固まってるはずだ。たぶん。次のお宅訪問までに永久凍土の奥深くまで掘り返すがいい。ウフフ
 そんな私が実は、怪しい微笑みを浮かべていることなど知るよしもない。