*好きと言えない俺様王子*

 プールサイドに水を撒いていると

「ねぇ黒瀬君」

 と椿が言った。

「あの……婚約とか嘘だからね、あれ!誤解っていうかなんていうか!それだけは知って欲しくて……」

「知ってる。関崎と話してるの、聞こえた」

「ぅええぇっ!?そ、そっかぁ~!よ、よかったぁ~!」

 椿は安堵したのか、頬が緩んでいた。

「さっきも里紅君と話したんだけどね、僕は婚約者だって言い張って……」

 やめろ、それ以上そいつの話をするな。

 どうやら俺は緋波アレルギーらしいから。

 思わずホースを握る手が強くなる。

 次の瞬間、

 ブシャアァッっという不吉な音と共に

「え、うわ!」

 という椿の軽い悲鳴がした。

「あ、悪い!」

 俺がホースを強く握ったせいで水が勢いよく飛び出し、椿にかかった。

 椿はずぶ濡れになっていた。