*好きと言えない俺様王子*

<颯side>

 最初は信じられなかった。

 転入生の緋波がいきなり『婚約者だ』なんて言い出すから。

 けれど緋波の態度を見る限り、あれはかなり本気だった。

 一方椿の方は身に覚えがないらしく、言い分が食い違っている。

 俺はそれを聞いた途端、なぜかイライラしてきた。

 本を読んでいても全く内容が頭に入らない。

 落ち着かなくなっている。

 知りたい、本当のことが――

 本当にあいつは椿の許婚なのか、だとしたらどういう経緯で婚約したのか――

 なんで俺、こんなこと気になるんだ?

 別に無関係だし、どうでもいいだろ?

 けれど、自分でも驚く程無性に気になって。

 本を読むフリをして椿と関崎の会話の内容に聞き耳を立てた。

 けれど椿が関崎と話していて、あれは幼少期の冗談だったと知ると、なぜかホッとしている自分がどこかにいる。