午前10時。我が家の玄関に座り込んだまま、もう何度目かも分からないため息が漏れた。


何でこの貴重な休日をあの獅坂先輩と過ごさなければならないのか……。


いっそすっぽかしてやろうかとも考えたけれど、やっぱり私は流されやす体質のようで、体が自然と玄関に向かっていた。


もうここまで来たんだ、腹をくくろう。


今日一日耐えれば明日は最高の休日が待っているのだから。


自分に気合を入れて立ち上がると、玄関扉をがチャリと開いた。


約束の時間のはずだけれど先輩はまだ出てきていないようだ。階段の前で待っていようと思い向かうと、そこにはりっちゃんのお兄さんであるけーたくんがいた。


私がまだ小学生の頃はよく、りっちゃんとけーたくんの三人で遊んでいたことがあった。


まあ、今では昔ほど関わることも減ってしまったんだけど、こうして顔を合わせると挨拶をする程度には仲が良かったりする。




「けーたくん」


「千草ちゃん!久しぶりだね」


「うん、同じ学校通ってるのに全然会わないよね」


「学年も違うし仕方ないよ」


「まあね、今からお出掛け?」


「ええっと……うん、その、彼女と」


「え!?けーたくん彼女いたの!?」


「そんなに驚く!?」


「いや、だって……」




こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、けーたくんは昔から色んなことに奥手なタイプだったし、まさか彼女がいるなんて思いもしなかった。


人は見かけによらないなあ……。