「キャー!獅坂先輩!」




どこからか聴こえてきたセリフに咀嚼していたご飯を吹き出しそうになる。




「きたよ、噂の獅坂先輩」




りっちゃんがニタニタとこれ以上なくむかつく笑顔を浮かべている。


ここで素直に反応するのも癪なので、はあっとため息を吐きながら廊下の声を無視してお弁当を食べ続けた。




「おい、橘」


「ちーちゃん、呼ばれてるよー」


「………」




りっちゃんはまた余計なことを……。


キッと睨みつけるとりっちゃんがペロッと悪戯っぽく舌を出した。


言ったところで反省なんてするはずもないので、仕方なく振り返る。


そこにはやっぱり後ろに女子をはべらす獅坂先輩がいた。




「何でしょうか……」


「お前、明日って何か約束とかあったりすんの」


「はい?」


「暇かどうか聞いてんだよっ」


「まあ、暇ですけど……」


「ふーん、そっか……」




心なしか先輩の顔が嬉しそうに見えるのは私だけだろうか。


っていうか、休日の予定聞かれて暇って答えてその表情は何なんだ。


どうせいつもみたいに私のこと休日に遊ぶ奴もいないのかよ、とか上から目線に思ってるんだろうけど。


ああ、むかつく。