やがて薄く開いた先輩の唇が、小さく言葉を紡ぎだす。
「好きだ……」
「………っ」
うわ、ヤバい。顔が熱い。
先輩の「好き」は想像以上の破壊力だった。
赤くなった顔を見られたくなくて慌てて顔を俯かせると、前方から「橘……?」と不安気に私の名前を呼ぶ声が聴こえた。
「せ、先輩のばか」
「なっ……」
「ちょっとキュンときちゃったじゃないですか」
「………っ」
「もー……ほんとムカつく」
「そ、それってお前……」
「責任、とってください」
「………!」
お互いに恥ずかしいくらい顔を真っ赤にして見つめ合う。
他所から見れば喧嘩して仲直りするどこぞのバカップルだ。
私も、先輩とそんな風になれるだろうか。
「橘のくせに……可愛すぎてムカつく」
「な、何ですかそれ」
「仕方ないから、責任とってやるよ」
「また上から……」
「言っとくけど他の奴にそんな顔したら許さないから」
「そんな顔ってどんな顔ですか」
「いいから、とにかく俺にだけ」
「変わらないですね、先輩は」
「そっちもな」
素直になれない上から目線な先輩の笑顔を、その時初めて『可愛い』と心から思った。
END

