「分かればいい。……あと、これ」
「はい？」
先輩がぶっきらぼうに何かを差し出してきた。
袋に書かれているのは、この書店のロゴだ。
「これ、何です？」
「お前の言ってた好きな作家の最新巻」
「え、何で先輩が私の好きな本を……」
「べ、別に、この間たまたまお前の友達に会ったら教えられたから覚えてただけだっ」
「そうなんですか……」
またりっちゃんは余計なことを……とは思いつつも、先輩の手から素直に本を受け取った。
袋の中身を覗いてみると、そこには確かに私のお目当ての本が入っていた。
「ありがとう御座います、先輩」
「……おう」
やっぱり先輩は相変わらずワケが分からんけども、ちょっとはいい人みたいだ。
「じゃあ、今度は先輩の行きたいところに行きたいです」
「は？何だそれ」
「私のばっかり知られているのも癪なので、先輩の好きなものも教えてください」
「好きなものって……今日はお前に付き合うって言ったろ」
「だから私に付き合ってください。先輩の好きなもの知りたいんです」
「……それは」
「はい」
「………っ」
開きかけた先輩の口がグッと閉ざされた。
よく見てみればその耳が真っ赤に染まっている。
