次のページには先輩のインタビュー記事が載っていた。
端の方に書かれた先輩のプロフィールを何となく読んでみる。
「高校一年の頃にモデルやり始めたんだ、ふーん」
全然知らなかった。というか、よく考えてみれば私は先輩のことなんて何も知らなかったことに気づく。
私の知っていることなんて、同じ深月荘の二階に住んでいて、いつも上からで強引でわがままで、みたいなことくらい。
先輩が本当はどういう人で、どういうことを思っていて、何が好きで何が嫌いなのか、そんなことすら、私は分かっていなかったのだ。
「……先輩の誕生日、11月7日?」
7日って、今日だ。
つまり今日は先輩の誕生日?
それで何で、私に付き合ったりなんかするの?
「おい、橘!」
突如聴こえた怒鳴り声にビクッと体が揺れる。
慌てて手に持っていた雑誌をパタンと閉じて元あった場所に戻した。
声のする方に恐る恐る振り向けば、先輩が眉間に深い皺を刻んで私を見ていた。
「こんなとこで何やってんだよ、ばか!」
「ご、ごめんなさ……」
「連絡したのに電話にも出ねえし!」
「え、うそ、気付かなかった……」
慌てて携帯を見るとたしかに先輩からの不在着信が残っていた。
「今更見ても遅いだろうが!」
「すみません……」
どうやら心配をかけてしまったらしい。
案外優しいところもあるようだ。

