「さっきのあいつ」
「はい?」
歩調を少しだけ緩めてくれた先輩に慌てて追いつく。
隣に並んで聞き返すと、先輩はさっきよりも小さな声で問うてきた。
「さっき、階段の前にいたあの男」
「ああ、けーたくんのことですか?」
「そいつとお前、どういう関係?」
「だから、本当にけーたくんとはそういう関係じゃなくて……」
「それはわかってる」
「じゃあ何ですか」
「……お前は、その、あいつのことどう思ってんの」
「私?」
「例えば、好き……とか」
「好きですよ」
「え、は……マジ?」
「幼なじみですし、そりゃ好きですよ」
「なんだ、そういうことか……」
「そういうことってどういうことですか?」
「べ、別になんでもねーよっ」
「何ですかそれ……」
本当に、わけわかんない。
なんか急に機嫌いいし。

