前を歩く石川先生の後ろを重たいカートを押しながら歩く。
今日の看護師さんは師長さんだから、さすがに師長さんにカートを持ってもらうわけには行かず、力いっぱい私が押している。
あと隣の部屋で、回診は終わる…。
だんだんと石川先生との距離が離れて行く。
子供たちのいる病室に入る、その時。
ガタッ!
カートを扉にぶつけてしまった。
その音で石川先生と師長さんがパッと振り向き、私を見る。
「す、すいませんっ!」
慌てて謝る。石川先生の顔は少々怒り気味。
子供たちの前だからか、石川先生の普段の様子から、こんな時には檄が飛ぶ。
このカートのおかげで、まだ10時前なのにヘトヘト…。
回診どころではなく、正直なところ早く終わって欲しいとまで思ってしまった。



