翌朝、目がさめると目の前には、幸治さん。
「はい、腕出して。はい、脇に挟んで。はい、胸開けるよー。」
仰向けのまま布団を外されると、幸治さんが手早く左腕に血圧、右の指にはパルスオキシメーター。
胸元のボタンを手早く開けられると、胸に聴診器が当てられた。
冷たっ!
寝起きで把握のできてないかなは、眉間にシワを寄せて幸治を見上げる。
パルスオキシメーターというのは、血中の酸素飽和度を調べるための簡易的な機械。98という数字が通常の値で、それよりも低いと酸素が足りていないので、酸素マスクをつけるなどの処置が必要となる。
「よし、大丈夫だな。」
と言われパルスオキシメーター、血圧計の表示を見ると異常はない。相変わらずの低めの血圧だが。
開きっぱなしの胸元を慌てて閉める。
「そんなに嫌がらなくてもいいのに、開けっ放しでも。」
なんて幸治がふざける。
『…そうじゃなくて…。』
『ん?』
「なんか…まだ嫌…。胸を見られるの…。」
「俺が一番知ってるだろ、その傷。」
『幸治さんは大丈夫だけど、でもなんか人に見せること自体、なんかな…。』
なんか毎度毎度この傷を見て、何か思われてるような気がして。
「まぁ、気にするな。じゃあ飯食ったら、すぐ出るぞ。」
切り替えの早い幸治はそう言い切ると、まだ何だかモヤモヤしたままのかなは仕事だということを思い出したのか、体を慌てて起こした。
なんか、まだ抵抗があるな…。
定時で帰ることに悩んでいたかなは。また他の悩みが出てきたようだった。



