「ただいま〜。」
帰るとお母さんが台所でご飯の準備をしてくれている。
『あ、お母さん、手伝います。』
慌てて台所に駆け寄る。
「大丈夫よ、かなちゃん。今日は疲れたでしょ?先にお風呂入っちゃって。」
『いや、でも…。』
最近、いや退院してからずっと、お母さんとお父さんが一緒に暮らしてくれている。そして私の家の仕事は、全てお母さんがやってくれている。
この状況が普通になっているけど、私はあくまでも幸治さんの奥さんなんだから、私がやらなきゃいけない。
お母さんに、なんだか申し訳ない。
「大丈夫よ〜。今までかなちゃんには何もしてあげられなかったんだから、これからはこんなことくらいさせてよー。」
笑顔でそう答えてくれるお母さん。
きっと、私が幼い頃、お母さんたちと離ればなれになってしまった時からのことを言っているに違いない。
そんな、昔のことを気にしなくてもいいのに。
「そうだよ、かなちゃん。これからは頼ってくれていいんだからね。」
と、振り返るとお父さんが帰ってきた。
私、名誉教授であるお父さんより先に帰って来てるなんて…。
さらに今、自分のされている優遇に申し訳ない気持ちになった。
そんな思いのまま、お風呂に向かった。



