帰りの幸治さんの車の中。
「まだ何か考え中?」
『ゔぅ……。』
定時で帰ること、やっぱり腑に落ちない…。
信号待ち、私の顔を覗き込む幸治さん。
『…なんであの条件を飲んでしまったのか…な。』
「当たり前だろっ!その体で残業して当直してって、耐えられないだろ?」
『でも、みんなあの後に仕事してってるのに。石川先生だって…。』
「じゃあ、その体で無理してまた入院になってもいいんだな!?」
『それは…。』
言葉に詰まったところで信号が変わり、車が動き始める。
ようやく幸治さんからの視線が外されホッとする。
「とにかく、今は仕事に体が慣れることだ。研修中だからって焦るなよ。」
たけるはもうほとんど研修が終わろうとしているのに…。
今日だって、幸治さんの担当患者のカルテ、全部たけるが打ち込んでたし。
患者さんへの治療方針をたけるにどうするか幸治さんが聞いてた。
たけるはどんどん進んでいってるのに、自分だけ…。
そんなこもを考えていると、車はマンションに着いた。



