「まだこんな時間…。」
ロッカーから荷物を取り出し、更衣室を出たところが幸治さんとの待ち合わせ場所。
『しょうがねぇだろ。』
後ろからボソッと聞こえ、振り返ると幸治さんの姿がある。
『まだ本調子じゃないんだからな。』
そうだよね。定時で帰るのは、石川先生だけじゃなくて、私の主治医の先生方とのお約束。
約束した時は良かった。仕事に復帰できるっていうだけで。
でも復帰すると復帰したで、どうしてもまた自分がやりたい方を望んでしまう。
わがままなのは分かってるけど。
「しょうがないですよね…。」
心臓移植したんだから…。
『早く帰って、飯喰いたいなぁ。』
さっきの私の言葉をかき消すように、幸治さんが言い放った。、
私が暗い気持ちになっているのを知ってるから。



