未知の世界5


「まだこんな時間…。」






ロッカーから荷物を取り出し、更衣室を出たところが幸治さんとの待ち合わせ場所。







『しょうがねぇだろ。』







後ろからボソッと聞こえ、振り返ると幸治さんの姿がある。








『まだ本調子じゃないんだからな。』








そうだよね。定時で帰るのは、石川先生だけじゃなくて、私の主治医の先生方とのお約束。





約束した時は良かった。仕事に復帰できるっていうだけで。





でも復帰すると復帰したで、どうしてもまた自分がやりたい方を望んでしまう。
わがままなのは分かってるけど。






「しょうがないですよね…。」







心臓移植したんだから…。






『早く帰って、飯喰いたいなぁ。』




さっきの私の言葉をかき消すように、幸治さんが言い放った。、








私が暗い気持ちになっているのを知ってるから。