ガラッ
開いた扉から石川先生と看護師さんが来た。
「どうだ?まだ痛むだろ?」
『あ…、』
と少し声を出そうとするけど、痛くて出ない。
「マスク外すな。」
そう石川先生が言い、口にある酸素マスクを外す。
「口開けて。」
渇いた口を開ける。
んっ!
喉に薬を塗られる…。
「喉が乾燥してるな。傷口はどうだ?」
『…っと、最初に、
起きた時より…痛みは軽いです。』
多少…だけど。
『鎮静剤は点滴からじゃなくて、錠剤にするから、完全には痛みは引かないだろうけど、ひどい時はナースコールしなさい。』
と言いながら聴診を始めるので、返事はしないでおいた。
「今のところは異常はないな。
自分の心音、聞いたことあるか?」
えっと…いつだったっけな。
『学生の頃に…』
「速さはどうだったか分かるか?」
『他の人より、若干速いような…。』
「そうだな。もともと他の人より速い心音だ。
今回、移植したことで、今はまだ心音が速い。
心臓が小さい分、どうしてもな…。
だが、これから成長していく心臓だから、大きくなっていくはずだ。
そうなれば、通常の大人のような速さの心音になるから。」
そうなんだ。前々から、心音が速いことは気にはなっていたけど…。
「ちょっとしたことで息があがるかも知れないけど、まぁ、様子見だなぁ。」
…なんか、不安。
移植は成功したのに…。
石川先生の言葉を聞いたら、言葉が出てこない。
「まぁ、退院しても俺は日本にいて指導員やるから、こまめに健診をいれてくからな。
必ず受けるんだぞ。」
『……。』
さらに言葉が出てこない。
「おいっ!」
『…はい。』
と小さい声で答えると、
「話には聞いていたが、健診を忘れたり、逃げたり…本当に診察嫌いなんだな。
医者のくせに。」
『っ!
そ、それは…。』
「まぁいい。来なかったら仕事中でも診るからな。」
『は…い。』
念を押すように見られると、怖い…。
進藤先生のようにはいかない気がする。



