『「かなちゃんっ!」』
病室の扉が開くと同時に、お父さんと進藤先生が私の名前を呼ぶ。
石川先生が聴診器を首にかけて待っている。
みんなが焦った顔をしている。
ベッドに降ろされるやすぐにパジャマの胸元が開かれると、石川先生の聴診器が胸に当たる。
ひんやりと冷たい聴診器に驚き、手で払いのけようとする。
すぐに幸治さんに手を掴まれ、診察が続けられた。
と同時に体温計が胸に差し込まれる。
いつものことだけど、されるがままの私。
「心音も肺も大丈夫そうですね。」
聴診を終えた石川先生が私ではなくて、私以外の先生に言う。
『熱は微熱程度か。』
幸治さんが体温計を確認してつぶやく。
『ったく!バカなことするなよ!』
突然の幸治さんの声に、思わず驚く。
『今回の検査は今後の生活に大きく関わるって知ってるだろ?』
知ってるよ…。
知ってる…。
「少しでも生きるためにでしょ。」
言ってしまった…。
私の一言で部屋の中の空気が一気に下がった気がした。
お父さんや進藤先生が一瞬動いたのが、目に入った。
『かな…。』
幸治さん、何か言ってよ…。
「知ってるよ。私だって医者になりたくて勉強したんだもん。
知ってる…。
心臓移植したからって、みんなと同じくらいは生きれないってこと。」
『……。』
幸治さん…。何か言ってよ。
あ…。
涙が出そう…。
言葉にしたら悲しさがさらに増すことくらい分かってたけど。
「しょうがないことだもんね…。」
『かなちゃん…、それは気にしなくていいから。
日本では海外と違って、移植後長く生きてみえる方はたくさんいるんだからな。』
お父さんが言う。
でも早く死ぬ人もいるだもん。
そう思うと涙が止まらなかった。
それだけじゃなくて、それから幸治さんが一言も喋らなかったことに、さらなる不安を覚えた。