ふと目を覚ますと、どこにいるのか一瞬わからなくなるが、すぐにそこは私の人生の、いや幸治さんと出会ってから大半の時間を過ごしてきた病院のベッドであることに気づいた。
普段から寝てばかりいて体力がない私は、病院にいることを確信したのか、どことなくぼーっとしていた。
トントン
「開けるぞ。」
返事を聞かずに入ってくる石川先生。慣れたもんだ。
「佐藤?少し熱を測ってもいいか?」
珍しい。看護師ではなく医者の石川先生が自ら検温に来るなんて。
いや、まだ検温の時間じゃないはず。だって検温は朝とお昼すぎだから。
なんて考えていて、返事をしないままでも石川先生は私の胸元のボタンを一つ開け、私の腕を動かして脇に体温計を挟み込む。
慣れたものだ。
それに抵抗もしない私。
慣れたものだ…。
ビピッ
体温計がずれないようにずっと私の腕と体温計を持っていた石川先生は、私が動く前に体温計の表示を見る。
おそるおそる、石川先生の顔を見上げる。
ここで熱があれば、検査は延期となってしまう。
「あぁ、大丈夫だ。平熱だ。
さっき顔が赤かったから、心配してたけど、大丈夫そうだな。」
熱がなくて、ホッとしたような、少し残念だったような…。
そんな複雑な思いで聞いていた。



