ベッドに入って一時間が経った頃、幸治さんも部屋に入って来た。
「まだ起きてるか?」
寝返りを打った私を見て、幸治さんが尋ねる。
『はい…。』
「少しは動かないと体力が落ちてくばかりだぞ。」
またその話…。
「今度の検査は必ずやらないといけないからな。大丈夫か?」
『……。』
「おい、かな?」
幸治さんに体を引っ張られ、振り向いて幸治さんの顔を見る。
あれ?
なぜだか、涙がポロポロとこぼれ落ちてる…。
どうしてだろ?
悲しいなんて思ってもなかったのに。
「…大丈夫か、かな」
『なんでだか分からないけど…
涙がっ……止まらな…い…。』
泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、両手で顔を抑える。
「こころ…
心が……疲れてるんじゃないかな…」
心が…、疲れてる?
……確かに、そうかも…。
思ってた以上に移植後の生活は過酷なものだった…。
もともと心臓を悪くしていた訳ではないから、 食生活を改善してたのはいっときのこと。
でも今では完全に180度変わった生活をしている。
それだけじゃなくて、ここ最近の家の中の空気に耐えられなくて…
それで…疲れちゃったのかな…。
気づくと幸治さんの胸の中で、声をあげて泣いていた…。



