未知の世界5


ベッドに入って一時間が経った頃、幸治さんも部屋に入って来た。





「まだ起きてるか?」






寝返りを打った私を見て、幸治さんが尋ねる。






『はい…。』






「少しは動かないと体力が落ちてくばかりだぞ。」






またその話…。








「今度の検査は必ずやらないといけないからな。大丈夫か?」








『……。』







「おい、かな?」







幸治さんに体を引っ張られ、振り向いて幸治さんの顔を見る。






あれ?







なぜだか、涙がポロポロとこぼれ落ちてる…。






どうしてだろ?






悲しいなんて思ってもなかったのに。







「…大丈夫か、かな」








『なんでだか分からないけど…





涙がっ……止まらな…い…。』







泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、両手で顔を抑える。






「こころ…







心が……疲れてるんじゃないかな…」







心が…、疲れてる?







……確かに、そうかも…。







思ってた以上に移植後の生活は過酷なものだった…。







もともと心臓を悪くしていた訳ではないから、 食生活を改善してたのはいっときのこと。







でも今では完全に180度変わった生活をしている。






それだけじゃなくて、ここ最近の家の中の空気に耐えられなくて…







それで…疲れちゃったのかな…。







気づくと幸治さんの胸の中で、声をあげて泣いていた…。